研究概要 |
本研究では、鶏骨格筋細胞の増殖・分化をグルコース輸送系遺伝子群の制御により調節し、新たな食肉生産の基盤とすることを試みた。本年度は、骨格筋細胞の増殖が著しいin vivo初期成長期のヒナでグルコース輸送系を制御する手法を構築し、新たな食肉生産向上技術の実用化へ向けてのアプローチを試みる。 (1)低血糖初生ヒナを用いたin vivoグルコース輸送系活性化骨格筋の発達に対する作用 初生ヒナの腹腔内にインスリンを投与し、骨格筋へのグルコース輸送を増加させた場合の骨格筋重量・分化制御因子発現(Myo D, Myogenin, IGF)の変動を経日的に観察した。初生ヒナへのインスリン投与により、筋衛星細胞のマーカー遺伝子であるPAX7の発現が、対照区の生理食塩水投与区に比べ、3日齢で亢進した。よって、インスリンによる初生ヒナの骨格筋へのグルコース輸送の亢進は、骨格筋細胞の増殖を促進する可能性が示唆された。 (2)サルファ剤投与ヒナ用いたin vivoグルコース輸送系活性化骨格筋の発達に対する作用 前試験と同様に、初生ヒナに内因性のインスリンを分泌させるトルブタミドを経口投与した。その結果、骨格筋の細胞増殖や7日齢の体重、浅胸筋重量が、対照区のヒナに比べて有意に増加した。 (3)絶食あるいはプレスターター飼料を用いた初生ヒナの骨格筋発達に対する作用 細胞増殖が著しい初生ヒナの骨格筋にエネルギー基質を効率よく供給するための一つの手法であるearly post hatch feedを適用した。Eafly post hatch feedを給与したヒナでは、体重、骨格筋重量ともに対照区に比べ有意に大きく、骨格筋のIGF-I発現が上昇、Myostatin発現が低下していた。 よって本試験により、「グルコース輸送系の制御」→「筋細胞の増殖・分化の制御」を明示することができた。
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