ニワトリ受精卵中(放卵直後)の胚盤葉明域中央部を採取した。この胚盤葉の周囲に付着する卵黄や血液をPBSを用いて完全に洗浄除去し、培養液中に移入した。この細胞塊を完全な単一解離細胞へと解離し、ゼラチンコートした24穴ディッシュに各1mlの培養液を注入した。既に調整済みの解離胚盤葉細胞を均一に播種した。CO_2インキュベーター内でこれらの細胞を培養した。至適培養条件を確認した後に各種のサイトカインを培養液に添加し、それらの効果を解析した。添加したサイトカインとしてはSCF、LIF、などである。細胞がコンフルエントになり次第、継代培養した。これらの培養細胞の状態を顕微鏡下で観察した。また多能性のマーカーであるアルカリフォスファターゼを用いて培養細胞を染色した。これによって培養条件下での多能性細胞数の増減を確認した。同時に養条件下で鶏における胚様体の形成を試みた。更にこれらの胚盤葉細胞をドナーとし、レシピエントに移植した。この結果、移植した胚盤葉細胞は初期胚の血管系に侵入し、血流によって胚体内及び胚体外に循環することが確認された。胚発生が進展するにつれ、これらの細胞は生殖腺原器へと移住定着することが確認された。このことから胚盤葉中央部の細胞は生殖細胞系列を含む各種の細胞系譜へと発生分化し得ることが確認された。今後これらの細胞を長期間、多分化能を保持させたまま培養できれば、鳥類胚性幹細胞が樹立され得るものと思われた。 骨髄幹細胞の単離の試みにおいては、先ず白色レグホンの初生雛から大腿骨および脛骨を採取した。これらの骨から筋などの付着組織を除去。採取した骨に切れ目を入れ、滅菌PBSで灌流しながら骨髄内容物を50ml遠沈管中に採取した。こうして採取した骨髄内容物を遠心分離し、細胞ペレットを残し上清をアスピレートした。それらをピペッティングし遠沈管に移した。次に遠沈管に血球分離用試薬であるLympholyte-Mを加え、遠心分離した。こうして得られた中間層およびその上層を別の遠沈管に移した。PBSで希釈後に再度遠心分離した。これらのサンプルを培養液と共に培養用ディッシュに播種し、細胞を培養した。またこれらの骨髄幹細胞をドナーとしレシピエントに移植した。この結果、移植した骨髄細胞はレシピエントの血管系や心臓部に集積し、キメラ体内で血管内皮細胞として再生し得るものと思われた。 今後これらの研究を一層推進する事により、鳥類における胚性幹細胞や体性幹細胞が樹立され得るものと思われた。
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