研究概要 |
家禽の健康を守り,卵とヒナの細菌感染を防ぐためには,生殖器の免疫機能を強化することが重要である。本研究は,鳥類の卵巣と卵管における自然免疫機能を強化することを目指して,抗菌ペプチド「鳥βディフェンシン(avBD),旧名ガリナシン」の産生とその調節機構を追究している。昨年度,(1)生殖器で発現するavBDとToll様受容体の種類,(2)Toll様受容体とavBDの発現に及ぼすリポ多糖の影響を遺伝子発現解析から明らかにした。本年度は,生殖器のavBD分布の同定と,Toll様受容体による微生物認識機能を追究した。その結果次のことが明らかとなった。(1)産卵期のニワトリの卵胞と卵管におけるavBD1,3及び12の免疫染色を施したところ,卵胞では卵胞膜内層と顆粒層に,卵管では主に粘膜上皮細胞に分布することが明らかとなった。(2)リポ多糖を静脈内投与すると卵胞では免疫反応産物が減少したので,この刺激はavBDを産生させると同時に放出もさせるものと考えられた。(3)休産期の卵管では,avBDの免疫反応産物が増加したので,卵管の機能が低下すると,avBDの放出が減少し,内に蓄積させるものと推定され,今後検証する。(4)産卵期および休産期のニワトリの卵管組織において,TLR2とTLR4の免疫組織化学染色を行ったところ,TLR2は毛細血管内被細胞,TLR4は粘膜上皮に検出され,休産期にはTLR2の分布には変化が無く,TLR4の分布は消失することが明らかとなった。(5)卵管の組織標本でインターロイキン1β(IL-1)とTumor Necrosis Factor α(TNF)に対する免疫染色を施したところ特異反応が見られたので,TLRを刺激後の下流でこれらのサイトカインが産生されることを示すことができることとなり,今後TLRが機能していることを実証するために,これらのサイトカインの分布を免疫染色する予定となった。
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