研究課題
基盤研究(B)
わが国においても、家畜に様々な感染症が発生し、社会を震撼させている。生体には病原体に対して防御機構が備わっており、この防御力には経験的に個体差のあることが知られている。抗病性に関わるMx遺伝子の解析中に、ウシMx1遺伝子は通常のMx1mRNAの他に、スプライシング変異によりエクソン3から3が転写されないで、代わりにエクソン3'(イントロン3内の配列)に置き換わったMx1BmRNAを産生するという、特異的な機構により防御している可能性が示唆された. 分子的にMx1タンパク質の最初の24アミノ酸が、Mx1Bでは異なる27アミノ酸に置換していた。細胞質で増殖する水疱性口内炎ウイルスを用いた感染実験の結果、Mx1はその増殖を抑制したが、Mx1Bは抑制しなかった。原因として、Mx1Bには特異的配列27アミノ酸中に核移行シグナルが存在していることが示唆された。したがって、ウシMx1は細胞内局在を変えることで核および細胞質で増殖する各種ウイルスに対して巧みに防御する機構を有することが推測された。そこで、ウシ各種品種(ホルスタイン・黒毛和種を含めたヨーロッパ系7品種とインド牛起源のブラーマン種)および水牛のMx1Bアミノ酸を調べたところ、全て同じ配列で高い保存性を示した。このことから、ウシ科反芻動物においてMx1Bは重要な機能を果たしていることが示唆された。しかし、同じ反芻動物であるヒツジとヤギについては、ともにMx1BmRNAの発現は確認できたが、アミノ酸に置き換わることないmRNAと推定された。したがって、Mx1Bは反芻動物全般に渡って機能的なタンパク質として合成されるとは考えられなかった。さらに、同じ偶蹄目のブタでは、Mx1BmRNAの発現は全く確認されなかった。
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