研究課題
本年度は、術後腸麻痺イレウスモデルラットならびに、クローン病モデルマウスSAMP1/Yitの二つ消化管疾患モデルを用いてプロスタグランジン類の病態生理機能について解析した。術後腸麻痺モデルにおいて消化管摩擦刺激を加えて24時間後には顕著な好中球浸潤とマクロファージ浸潤が認められ、この際、消化管運動の抑制が観察された。この炎症応答はCOX-2阻害剤の投与により改善することから、プロスタグランジン類の関与が考えられた。また、免疫組織化学検索により、マクロファージにおいてiNOSの誘導が観察され、消化管運動障害もNO合成酵素阻害剤により顕著に改善した。消化管器官培養法による解析結果において、LPS刺激によってマクロファージよりCOX2/PGE2の産生が確認されていること、マクロファージからのiNOS産生がEP2KOマウスでは認められないことから、術後腸麻痺における炎症による消化管運動抑制においても、マクロファージからのPGE2産生とそれに続くiNOS誘導が中心的役割を担っていることが示唆された。一方、SAMP1/Yitクローン病モデルマウス回腸炎症部においては、消化管蠕動運動の顕著な抑制が認められたが、消化管平滑筋の収縮機構自体に異常は認められなかった。消化管管腔内は顕著な筋層部の肥厚と粘膜部の肥厚により狭窄しており、これが消化管内容物輸送能の低下に関与するものと考えられた。筋層肥厚ぶにおいてはトルイジンブルーで染まる顕著な肥満細胞の浸潤が認められ、PGD2の関与が考えられた。一方、粘膜肥厚部においては造血器型PGD2合成酵素H-PGDSを発現する粘膜上皮細胞が多数出現し、これが粘膜肥厚や粘膜炎症応答に重要な役割を担っている可能性が考えられたが、この点については今後さらに詳細な検討を必要とする。
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