研究概要 |
本研究は,リーシュマニア症の総合的診断システムの確立とドラッグデリバリーシステムを用いた新規治療法の開発することで,わが国における輸入リーシュマニア症の先駆的予防対策に貢献するとともに,流行国におけるリーシュマニア症の疫学調査・研究推進のためのツールを開発して国際医療に貢献することを目的として計画された。本年度は,南米エクアドルの皮膚リーシュマニア症の血清診断のため,Leishmania (V.) panamensisのheat shock protein 70 (HSP70)ならびにheat shock protein 83 (HSP 80)のレコンビナント蛋白を小麦胚芽抽出液による無細胞タンパク合成系を用いて作製した。その結果,rHSP70は確定診断されたすべての患者血清と反応したことから,診断用抗原として有用である可能性が示された。一方,パキスタンの皮膚リーシュマニア症患者からの分離株のアイソザイムパターンを調べた結果,L.(L.)majorの分離株間に大きなバラツキが認められたが,L. (L.) tropicaの分離株間でのバラツキはほとんど見られなかった。また,L. (L.) major に感染した患者も分子量約70kDaの抗原を認識していることが判明した。日本への輸入リーシュマニア症として,スペインで感染しわが国で発症したイヌ内臓リーシュマニア症を報告した。薬用植物抽出液から分離した脂溶性クアシノイドを封入薬剤としてリポソーム製剤の合成を試行したところ,比較的高濃度で安定なリポソーム製剤の作製ができることが明らかになった。
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