研究概要 |
本研究は, リーシュマニア症の総合的診断システムの確立とドラッグデリバリーシステムを用いた新規治療法を開発することで, わが国における輸入リーシュマニア症の先駆的予防対策に貢献するとともに, 流行国におけるリーシュマニア症の疫学調査・研究推進のためのツールを開発して国際医療に貢献することを目的として計画された。本年度は, パキスタン南部のインダス河流域の皮膚リーシュマニア症流行地におけるサシチョウバエの吸血源動物についてさらに解析を行った。その結果、Phlebotomus属サシチョウバエはウシ、ヤギ、ヒト、イヌ、ラットから吸血していること、また,変温動物を吸血するとされていたSergentomyia属サシチョウバエもヒトおよび多種類の家畜や野生のネズミ類を吸血していることが強く示唆された。日本への輸入リーシュマニア症として、イタリアで感染したと考えられる2例のイヌの内臓リーシュマニア症をDNA診断した。東南アジアの薬用植物から抽出したC-20クアシノイド類(bruceine A, bruceantinol, bruceine C, brusatol, bruceine B)は、in vitroにおいて強力な抗トリパノソーマ原虫活性を示すことが明らかになったが、これらのクアシノイド類はリーシュマニア原虫に対する活性は高くはなく、トリパノソーマとリーシュマニアでクアシノイド類に対する感受性が異なっていることが判明した。しかし、クアシノイド類のリボソーム製剤では抗原虫作用が約2倍強くなることがわかり、今後、さらに検討すべき課題と考えられた。
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