本研究は一滴の血液サンプルから動物の原虫感染症を網羅的に診断できるペプチド(プロテイン)アレイを開発することを最終目的とし、以下の手順で実施している。1) 牛に感染し得る主要病原原虫の診断用抗原の発現精成、2) ウシ実験感染血清を用いた試作プロテインアレイの最適反応条件の検討、3) 試作プロテインアレイによる野外検体の調査及びその総合評価、4) 本法の導入による原虫感染症に対する万全な監視体制の確立。昨年度までにBabes ia bovis及びBabesia bigeminaのRAP-1抗原、Toxoplsma gondiiのSAG2抗原、NEospola caminumのSAG1抗原、Cryptosporidium parvumのp23抗原の発現精成を完了した。 平成20年度は2) ウシ実験感染血清を用いた試作プロテインアレイの最適反応条件の検討を重点的に行ってきた。その結果、(1) スライドガラスに専用スポッターを用いて標的抗原を一定量固着、(2) 感染血清反応後に二次抗体としてHRP標識抗ウシイムノグロブリン抗体を反応、(3) 化学発光(ケミルミネッセンス)によりイメージアナライザーで検出するという試験行程を確立した。続いてスライド上に抗ウシIgG抗体の10倍希釈系列のスポット列を作成し、陽性コントロール血清及び陰性コントロール血清の蛍光発光レベルを数値化することに成功した。Babesia bovis及びBabesia bigeminaについてはコントロール血清の10倍希釈系列を作成して既存のELISAとプロテインアレイによる検出感度を比較したところ、いずれもプロテインアレイはより高い感度を示し、フィールドサンプルを用いた比較試験において期待できる結果を得ることができた。
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