研究課題
本研究は一滴の血液サンプルから動物の原虫感染症を網羅的に診断できるペプチド(プロテイン)アレイを開発することを最終目的とし、以下の手順で実施している。1)牛に感染し得る主要病原原虫の診断用抗原の発現精成、2)ウシ実験感染血清を用いた試作プロテインアレイの最適反応条件の検討、3)試作プロテインアレイによる野外検体の調査及びその総合評価、4)本法の導入による原虫感染症に対する万全な監視体制の確立。昨年度までにウシバベシア組換え抗原を用いて試作プロテインアレイの最適反応条件を確立した。21年度は、野外のウシ血清サンプル53検体を用いて、ELISAとプロテインアレイの比較検証を行った。最初に、非感染ウシ血清20検体を用いてカットオフ値を算出した結果、B.bovisとB.bigeminaそれぞれ、8.012μg/ml、12.956μg/mlとなった。解析ソフトを用いて蛍光度算出を行ったウシIgGの発光量をもとに、プロテインアレイによる標準曲線を作成し、野外のウシ血清サンプル中の抗体量を算出した。次に、53検体の抗体量を算出し、カットオフ値を用いて陽性と陰性に判別した結果、プロテインアレイを用いた野外サンプルのB.bovisあるいはB.bigeminaのスポットの抗体量が陽性を示した検体数はそれぞれ53検体中46検体(86.8%)及び53検体中43検体(81.1%)であった。一方、ELISAによる野外サンプルの陽性検体数はB.bovisでは44検体が陽性を示し、B.bigeminaにおいては、39検体が陽性を示した。プロテインアレイとELISAの陽性検体の一致率はB.bovisにおいて95.7%(44/46)、B.bigeminaにおいては90.7%(39/43)と高い一致率を示した。今後、B.bovis及びB.bigeminaだけでなく、その他原虫由来の組換え抗原の至適濃度の検討を行うことで、さらに網羅的かつ容易に診断が可能な新規の診断法になるのと期待される。
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