本年度は、SIVmacのゲノムに逆転写酵素とインテグラーゼの各遺伝子をHIV-1由来に置換した新規SHIV (SHIV-rtiと命名)のサル感染実験を行った。感染性分子クローンから調製したSHIV-rtiを2頭のアカゲザル(MM402とMM403)に静脈内接種した。SHIV-rti接種後、各各のサルから2〜10週目に採取されたPBMCよりウイルスが再分離され、それ以降はウイルス分離ができなくなった。しかしMM402については、21週目から再びウイルスが分離できるようになり、それに合わせてPA抗体価も上昇を示し、以後≧16384の力価を下回ることはなかった。血中ウイルス量は、当初こそ10の3乗〜4乗copies/ml程度に留まり、その後暫く測定限界以下が続いたが、70週目を過ぎてから再び急激な増加を示し、10の6乗copies/ml以上の高い数値を維持するようになった。CD4細胞数は初め接種前のレベルを維持していたが、血中ウイルス量の増加とほぼ時期を同じくして下がり始め、やがて接種前と比べ10%以下にまで減少した。同様に体重も徐々に減少傾向を示し、166週目に衰弱死亡した。一方、MM403はPA抗体価が32〜64に留まったままで持続感染状態に至らなかったが、接種後60週目で死亡した。上記の成績から、我我が作成したSHIV-rtiはサル個体において感染増殖することが明らかとなった。とりわけ、1頭のみではあるが持続感染状態を経て最終的にエイズ様症状を呈して死亡した個体があったことは、この新規SHIVとアカゲザルのモデル系が将来的にエイズ治療薬や投与法の開発に利用できることを示唆するものと考えられる。
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