研究概要 |
1)ABA8'位水酸化酵素の調製。シロイヌナズナのABA8'位水酸化酵素CYP707Aをバキュロウイルス-昆虫細胞系により発現させ、同細胞のミクロソームを用いて粗ABA8'位水酸化酵素を調製した。その酵素活性を8'-ヒドロキシABAとその異性体ファゼイン酸への変換を検出することによって測定できる系を確立した。この検定系を用いて、合成された酵素阻害剤候補物質の酵素阻害活性試験を行った。 2)ABA8'位水酸化酵素阻害剤。基質ABAと拮抗する型の酵素阻害剤として合計35種のABA誘導体をデザイン・合成し、そのABA8'位水酸化酵素阻害活性を測定するとともに、ABA活性として気孔閉鎖活性を測定した。その結果、(+)-5'beta, 9'-cyclo-ABAが0.3 microMではABAとしての生物活性を示さずに、ABA8'位水酸化酵素に対して阻害活性を有するアンタゴニスト作用を有することを見出した。この誘導体は、ABA代謝酵素を選択的に阻害できる有望な誘導体であるが、より高濃度では弱いながらABA活性を示すため、まだ改良が必要である。一方、ABA8'位水酸化酵素阻害活性を有することが知られているウニコナゾール-Pの阻害メカニズムを調べるため、その誘導体もデザイン・合成し酵素阻害活性を調べた。その結果、ウニコナゾール-Pの強い酵素阻害活性には、そのコンホメーションが重要であることが示唆された。 3)その他。ウニコナゾール-Pを投与したシロイヌナズナは、乾燥ストレスに抵抗性を示すこと、実際にABA含量がより高く維持されることを確認した。シロイヌナズナを用いてファゼイン酸還元酵素をコードしている遺伝子の探索を行った。
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