研究概要 |
1) Phaseic acid 4'位還元酵素 数種類の植物をスクリーニングした結果、キヌサヤエンドウの未熟豆果の抽出液にphaseic acid 4'位還元酵素活性を検出した。反応生成物はdihydrophaseic acidであり、そのepi体は検出されなかった。このことはキヌサヤエンドウ未熟豆果からはdihydrophaseic acidだけが検出され、そのepi体は検出されないことと一致していた。Phaseic acid還元反応の至適pHは8.0であり、補酵素としてNADPHを要求した。キヌサヤエンドウ未熟豆果より同酵素を比活性で抽出液の130倍以上に精製した。 Phaseic acid 4'位還元酵素はNADHあるいはNADPH依存的ジヒドロゲナーゼであると予想される。シロイヌナズナゲノム中にはshort-chainアルコールデヒドロゲナーゼ(SDH)が約90遺伝子存在するので、SDHファミリーを候補としてPhaseic acid 4'位還元酵素をスクリーニングすることとし、約60個のSDHの全長cDNAをデータベースあるいはRT-PCRにより取得し、組換え酵素発現系を構築した。今後、Phaseic acid 4'位還元活性を示すクローンの同定を進める。 2) アゾール系ABA 8'位水酸化酵素特異的阻害剤の開発 低選択性P450阻害剤uniconazoleをリード化合物とし、アゾール環部分の自由回転を制限した配座固定アナログ8種、アゾール環に水酸化メチル基を導入したアゾール環修飾アナログ3種,クリック反応によりベンゼン環の4位を修飾したアナログ15種の計26化合物を合成した。このうち、配座固定アナログとベンゼン環4位修飾アナログのいくつかは,イネ実生の生育をほとんど阻害しないにも関わらず、ABA 8'位水酸化酵素に対してuniconazoleに匹敵する高い阻害活性を示した。したがってこれらのアナログは、ジベレリンやブラシノステロイドの生合成に関わるP450をほとんど阻害しない、ABA 8'位水酸化酵素に特異的なP450阻害剤である可能性が高いと考えられる。
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