研究概要 |
硫黄酸化関連酵素である硫化水素:ユビキノン酸化還元酵素(SQR)およびユビキノール酸化酵素について,その酵素の精製と性質の検討を行った。Acidithiobacillus ferrooxidans NASF-1株の膜画分よりSQRを128.4倍に精製した。精製されたSQRは,47kDaの単一ポリペプチドから成るモノマーであった。硫化物とubiquinone(Q_2)に対するK_m値はそれぞれ42と14μMであり,30-50μmol Q_2/min/mgのV_<max>を示した。最適pHは7.0付近であった。精製されたSQRのN末端アミノ酸配列は,A.ferrooxidans ATCC23270株のゲノム配列上に見出された推定のsqr遺伝子産物と一致した。この配列に基づいてNASF-1株のsqr遺伝子をクローニングと大腸菌中での発現を検討している。なお,Acidithiobacillus thiooxidansの細胞膜に検出されたSQRの精製は現在検討中である。 一方,A.thiooxidansからユビキノール酸化酵素をほぼ均一に精製した。スペクトル解析によって,aタイプのヘムが含まれていることを明らかにした。精製酵素標品には57,34,および23kDaのタンパクバンドが検出された。酵素はpH 6.0および30℃で最大の活性を示した。酵素活性は,bc1複合体の阻害剤であるアンチマイシンやミキソチアゾールではあまり阻害されなかったが,キノンのアナログであるHOQNOで強く阻害された。これまでA.thiooxidansの硫黄酸化における末端酸化酵素は不明であったが,本酵素の精製によってユビキノール酸化酵素が主要な末端酸化酵素である可能性が強くなった。なお,亜硫酸酸化活性はHOQNOで強く阻害されることから,ユビキノル酸化酵素の亜硫酸酸化への関与が示唆された。
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