研究概要 |
本年度の研究は、チオ硫酸の代謝に関連する酵素であるチオ硫酸:フェリシアナイド酸化還元酵素の精製であったが、硫黄生育細胞ではチオ硫酸酸化活性が低くかったため、テトラチオン酸で増殖した細胞を用いることとした。それに伴って、テトラチオン酸代謝に関連する酵素の精製およびその遺伝子のクローニングを行った。テトラチオン酸は硫黄の酸化過程で最も重要な中間体の一つで、海洋性硫黄酸化細菌は唯一のエネルギー源として増殖できる。硫黄酸化細菌がテトラチオン酸で生育する際には、テトラチオン酸を加水分解する酵素が最初の分解を触媒する。テトラチオン酸で増殖したAcidithiobacillus ferrooxidans細胞から精製された酵素は、分子量50kDaの同一サブユニットからなる2量体として外膜に存在し、最適pHが3.0、酸性条件下で極めて安定で、活性発現に200mMの硫酸イオンを必要とした。精製したテトラチオン酸加水分解酵素のN-末端アミノ酸配列を用いて,A.ferrooxidansのデータベースから、この酵素をコードする遺伝子を初めて同定した。大腸菌内でこの遺伝子を発現させたところ、封入体を形成し、活性のあるタンパク質は得られなかった。発現タンパク質を用いて作製した抗体は、精製した酵素と反応したことから、検出した遺伝子がテトラチオン酸加水分解酵素をコードしていると結論付けた。酵素はテトラチオン酸によって誘導的に合成されることが明らかとなった。硫化水素:キノン酸化還元酵素遺伝子のクローニングを引き続き行っており,新たにテトラチオン酸加水分解酵素遺伝子のクローニングを開始した。
|