研究課題
ザゼンソウは寒冷環境下でその肉穂花序と呼ばれる特異的な器官が発熱し、かつ、その体温を20度内外に維持できるサトイモ科の植物である。本研究においては、発熱植物ザゼンソウにおける熱産生メカニズムを明らかにすることを目的に、ミトコンドリアに存在する脱共役蛋白質(UCP)に着目した研究を行った。特に、今年度においては、ミトコンドリア膜電位と酸素消費量を同時に測定できる実験系の確立に成功し、ザゼンソウのUCP活性を精密に測定することが可能となった。また、ミトコンドリアにおける呼吸制御をより深く理解するため、UCP分子とともにシアン耐性呼吸酵素(AOX)の機能に関する解析も推進した。さらに、一般的に非発熱植物と見なされているタバコを用い、ウイルス感染における熱産生現象サーモグラフィーを用いて検証することを試みた。得られた成果は以下の通りである。新たに確立した実験系を用いることにより、ザゼンソウ肉穂花序の小花から調製したミトコンドリアは明確なUCP活性を有することが明らかとなった。また、UCP分子は特異抗体を用いたウエスタン解析により、SDS-PAGE上で29kDaに1本の明確なバンドとして検出された。これまで動植物で発現しているUCPは全てウエスタン解析において32kDaの移動度を示す分子として報告されていることから、ザゼンソウにおいてUCP活性を有する分子は、従来のUCPとは異なるタイプであることが強く示唆された。また、UCP活性を有するミトコンドリアにおいては、ピルビン酸により賦活化されうるAOXが発現していることが判明した。従って、ザゼンソウにおいては、29kDaの新規UCP分子とAOXの共発現が重要な機能を有している可能性が高い。一方、ある種のウイルスを感染させたタバコの葉は、特定の時期に明確な発熱現象を示すことが明らかとなった。現在、当該熱産生プロセスにおいて、ザゼンソウで機能しているUCPやAOXが関与しているかどうかを検討しようとしている。
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