研究課題
ザゼンソウの発熱性肉穂花序から調製したミトコンドリアの呼吸活性を、酸素消費量を指標に解析した。その結果、state3における呼吸活性は、state4とほぼ同様であることが判明した。この結果は、ジャガイモ塊茎等において観察される結果(state4における酸素消費活性は、state3に比べて減少する)と異なるものであり、ザゼンソウにおいては内在性の脱共役蛋白質(UCP)が活性化されていることを示唆している。また、UCP活性は、ミトコンドリアにおけるユビキノンの酸化還元レベルにも影響を与えることが予想される。そこで、発熱中および発熱後の肉穂花序からユビキノンを分離し、その還元レベルをHPLCを用いて解析したところ、ユビキノン(UQ9およびUQ10)はいずれのサンプルにおいても、中程度(40-50%)の還元度を示すことが判明した。これは、ヨーロッパに自生する発熱植物A. maculatumで報告されている結果(UQの還元レベルは90%程度と非常に高い)とは異なるものである。この結果は、一過的な発熱が認められるA. maculatumと恒温性を有するザゼンソウにおけるUCPを含むミトコンドリア呼吸機能の差異によるものと考えられ、発熱植物間の熱産生メカニズムの多様性を示唆する結果である。また、今年度は高感度熱画像解析システムを用いたウイルス感染過程における発熱現象に関する調査を行い、熱産生におけるシアン耐性呼吸酵素(AOX)の関連を示唆する結果を得た。一方、興味深いことに、ザゼンソウ由来のAOXを発現させた動物細胞は活性酸素種の発生が低減していることが判明し、AOXの発現はミトコンドリア呼吸に大きな効果を与える可能性が示唆された。
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FEBS Letters 583
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Plant Physiology (In press)
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