研究課題
計画のうち本年度特に特に成果が得られたテロメア領域の複製タイミングについて報告する。既にテロメラーゼ陽性細胞であるHela細胞のテロメアDNAの複製タイミングを詳細に解析しているが、ヒトのALT細胞である(VA-13細胞)を用いてテロメアDNAの複製タイミングを解析した。まず、ALT細胞であるVA-13細胞を細胞周期同調法によって、S期(DNA合成期)に分画した。細胞周期同調法として、DNAポリメラーゼα阻害剤であるアフィジコリン処理により一旦S期に同調した細胞を通常培地でリリース培養し、S期の各時期で細胞を回収する方法をもちいた。細胞周期同調後、ハロゲン化ヌクレシドであるBrdUとBrdCを同時に複製鎖に取り込ませ標識し、回収後BrdU、BrdCにより複製標識されたゲノムDNAに対して、抗BrdU抗体を用いた免疫沈降を行い、複製直後のDNAのみを回収した。BrdUで標識したDNAからはGリッチ鎖とCリッチ鎖がともに回収され、この産物に特定の遺伝子領域に対するプライマーを用いて定量的リアルタイムPCRを行いテロメアの複製タイミングを定量的に解析した。コントロールを確認し、この方法に正確に特定遺伝子領域の複製タイミングが解析可能であることを確認した。次にテロメア反復配列特異的なプライマーセットを用いて解析した結果、S期の中期に特異的なピークが見られた。このことから、VA-13細胞のテロメアはS期中期に複製すると考えられる。既にテロメラーゼ陽性細胞のHela細胞もS期中期にテロメアが複製することを示しており、テロメラーゼ陽性細胞とALT細胞でテロメアDNAの複製は共にS期中期で行われていることが示された。この他、DNA損傷時のPARP-1の役割、核マトリックス上での複製開始と転写の関係、セントロメアヘテロクロマチン領域のDNA低メチル化とヒストン修飾変化のクロマチンダイナミクス等をまとめた。
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Proceedings of National Academy of Science, U.S.A. 106
ページ: 3184-3189
Journal of Cell Biology 183
ページ: 1203-1212