種子は、人類の重要なタンパク質源であり、将来の食糧不足を考慮すると、タンパク質の高集積化が望まれる。このためには、種子貯蔵タンパク質の輸送・集積の分子機構を解明する必要がある。本研究では、以下の3点からアプローチした。 1.小胞体(ER)からタンパク質貯蔵液胞(PSV)への輸送経路 ダイズ、カボチャ、エンドウでは、貯蔵タンパク質のERからPSVへの輸送経路が異なることを電子顕微鏡観察により確認するとともに、その決定要因が、輸送されるタンパク質の分子表面疎水性に依存することを推定した。 2.PSVへの輸送シグナルとレセプターの構造と認識機構 ダイズ7Sと11SのC末端型輸送シグナルの構造要因を解析し、C末端3残基以上が不可欠であることを見い出した。また、この領域がVSRホモログと高い親和性を示すことを確認した。さらに、VSRホモログの結晶化を進めている。 3.種子貯蔵タンパク質の高密度集積構造の形成 種子貯蔵タンパク質(7Sグロブリンと11Sグロブリン)の高密度集積を可能にしている構造要因を解明するためにはできるだけ多くの種子貯蔵タンパク質の立体構造を解明する必要がある。本年度は、マングビーン7S、アズキ7S、カボチャ11Sの各組換え型と、ダイズ11Sグループ1の天然型の立体構造を解明した。
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