研究概要 |
植物機能向上と有用物質生産を目指して,新規有用遺伝子を探索・発見し,代謝工学的に利用するための応用研究基盤を確立することを最終目的とする.まず,これまで整備してきたフーリエ変換イオンサイクロトロン質量分離装置(FT-ICR/MS)による高速代謝フィンガープリンティングと化合物構造情報取得,GC/MSおよびLC/MSによる代謝産物の定量・同定を組み合わせたメタボロミクス研究手法を完成させる.研究期間中は,植物ステロール生合成経路を全解明するとともに,脂肪酸代謝に関わる新規シトクロムP450遺伝子の機能解析,桂皮酸モノリグノール経路を研究目的とした. 1)シロイヌナズナP450の進化系統樹解析および,基質認識部位における酵母CYP61とのアミノ酸配列相同性から植物CYP710A遺伝子をステロール側鎖不飽和化に関与するP450遺伝子として同定し,詳細な機能解析を行うことによりCYP710Aの持つ酵素的性質を明らかにした. 2)シロイヌナズナの桂皮酸モノリグノール経路に関わる4-coumaroyl CoA ligase, hydroxycinnamoyl CoA transferase, cytochrome P450(CYP98A3,CYP98A8,CYP98A9)のcDNAをクローニングし,バキュロウイルス・昆虫細胞発現系によって組換えタンパク質を作製した.これらのウイルスを昆虫培養細胞にて共感染させ,昆虫細胞中に高等植物の桂皮酸モノリグノール経路を構築することができた.反応経路の初発物質を添加するだけで,昆虫細胞中に植物代謝産物が蓄積した.代謝産物はFT-ICR/MSによる一斉分析により,各酵素段階の基質,反応生成物を同定した.また,各酵素の基質特異性についても検討を加えることができた.
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