研究代表者の研究室では、生理活性を持った有機化合物を、合成化合物ライブラリーから見つけてきた。本研究の目標は、それらの化合物のうちで極めてユニークな二つの合成化合物、クロメセプチンとファトスタチンを起爆剤として、がんや代謝疾患などに関係する細胞内シグナルを発見することである。研究は計画通り進行している。初年度(平成18年度)の研究成果を以下に要約する。 ・クロメセプチンはインスリン様成長因子を過剰発現する肝臓癌細胞の増殖を選択的に阻害する。このクロメン誘導体がMFP2に結合すると、STAT6という転写因子が特異的に活性化され、インスリンやIGFのシグナルを阻害するタンパク質が発現されることがこれまでの研究でわかっている。MFP2とSTAT6の間をつなぐタンパク質を同定するため、STAT6に結合するタンパク質を細胞抽出液から免疫共沈降させ精製・同定した。また、MFP-2についても同様の実験を行い、MFP-2に結合するタンパク質を精製・同定した。今後、これらのタンパク質の機能解析を行う。 ・ファトスタチンは細胞内での脂肪合成を阻害する。このチアゾール誘導体は、SREBP転写因子の活性化を選択的に阻害することがこれまでの研究でわかっている。ファトスタチン誘導体を約40種合成し、構造活性相関を得た。中にはファトスタチンよりも活性の強い化合物もあった。構造活性相関を参考にし、ビオチン化ファトスタチンの設計・合成を行った。今後、ビオチン化ファトスタチンを用いて、ファトスタチンの標的タンパク質精製・同定を行う。ファトスタチン誘導体とそれらの生理活性については、特許を申請した。
|