前年度に引き続き、スペルミジン、スペルミンに対する呈色感度の向上を目的とした。基本骨格であるベンゾラクトン環上の置換基の変換のほかに、ベンゾラクトンのベンゼン環をナフタレン、アントラセンに変換した化合物も合成した。目視および、吸収スペクトルを用いた一次スクリーニングを行い、ベンゾラクトン環上にトリフルオロメチル基を持つもの(化合物1)、ジメチルアミノ基を持つもの(化合物2)、ベンゼン環をアントラセンに変換したもの(化合物3)の三化合物を、有望化合物として選択した。これらの内、化合物2、3は蛍光応答性をも併せ持つ化合物であった。その蛍光応答挙動は、スペルミジンを加えていくにっれて、蛍光が減弱するON→OFF型の応答であり、迅速定量の観点から見た場合には好ましい応答ではない事が判った。また呈色応答において最も鋭敏な検出感度を示したものは化合物2であった。化合物2の検出感度はスペルミジンに対して10マイクロモル/リットル程度であった。申請者は生体内ポリアミン研究の試薬として実際に応用可能な濃度としてマイクロモルオーダーを想定しているが、その濃度に後一歩のところまで迫るものである。更なる感度向上を目指し、ベンゾラクトン環を別の複素環に変換した化合物も合成した(化合物4)。化合物4はこれまで合成した一連の化合物の中で圧倒的に感度が向上しており化合物2の約100倍の感度を持つ事を明らかとした。今後、化合物4の機能評価を行う予定である。
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