研究概要 |
遷移金属やランタノイド金属の化学は新反応の宝庫として近年特に注目を集めている研究領域である.これらの金属は,典型金属には見られない特異な化学的性質を持ち,従来の手法では成し得なかった新規化学変換法や合成困難な物質の効率的かつ簡便な合成を次々に可能にしている.また,環境調和型の合成化学が求められる今日,触媒的な連続反応を開発することは極めて重要である.このような観点から,報告者らは,金属錯体の潜在特性を駆使した新規反応の開発に取り組み,平成18年度に以下の成果を得た. 1.アレンの連続環化反応による複素環の新規合成法の開発 申請者らはブロモアレンがアリルジカチオン等価体として機能することを既に見出している.今回,分子内に二つの求核部位を有するブロモアレンを用いるタンデム型閉環反応を検討した.その結果,塩基性条件下,分子内にスルファミドを有するブロモアレンを基質として用いることにより,タンデム型反応が進行し,二環性化合物が一挙に得られる事を見い出した.また,この際,パラジウム触媒の有無により,閉環反応の位置選択性を制御できることを明らかにした. 2.パラジウム触媒を用いた不斉転位反応の開発 報告者らは,π-アリルパラジウム錯体への求核反応が立体特異的に進行する点に着目し,容易に得られるキラルなα-オキシアリルアルコールへの求核反応を検討した.その結果,保護された水酸基を位置制御に用いて不斉転位反応を行うことにより,有用な1,4-不斉化合物を立体選択的に作り分けられることを見いだした.
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