研究概要 |
(1)炭素20ジベレリン類の不斉全合成:1,3-シクロヘキサンジオンを本合成の出発原料に用い,数行程で合成した3-アリル-2-ブロモシクロヘキセノンを光学活性なオキサザボロリジン存在下にカテコールボランで不斉還元して,光学活性なアリルアルコール誘導体を合成した。次に,Johnson-Claisen転位反応を利用して四級不斉中心を構築後,エステル部位をアルコールへ還元し,MOM基で保護した。さらに,6員環上のアリル位をPDCで位置選択的に酸化してエノンへ変換した。エノンを相当するシリルエノールエーテルへ導き,鍵反応である触媒的環化アルケニル化反応に付しビシクロ[3.2.1]オクタン骨格の構築を達成した。ビシクロ[3.2.1]オクタン骨格の構造上の特徴を利用して,イソプロペニル基をconvex側から1,4-付加し,さらに,ケトンを保護した後,ジエン部位を導入することにより,分子内Diels-Alder反応の基質となるトリエンを合成した。望むトランス融合したデカリン骨格が立体選択的に得られるものと予想して,逆電子要請型の分子内Diels-Alder反応を行った。その結果,望む環化成績体が高収率で得られた。続いて,不飽和エステル部位のオレフィンのみをマグネシウム-MeOHの条件で還元後,ケトンのα位の立体選択的メチル化を行った。今後,ケトン部位のメチレンへの変換およびアルコールへの還元により,ジベレリンA_<12>,A_<111>,およびA_<112>の不斉全合成を達成する予定である。 (2)Quadroneの全合成:1,3-ブタジエンと不飽和エステルとの分子間Diels-Alder反応を用いて大量かつ容易に合成可能なシクロヘキセン誘導体をハロラクトン化反応等に付し,相当するシクロヘキセンジオールへ変換した。オレフィン部をオゾン酸化後,生成するラクトールをヘミアセタールへ変換し,Wittig反応を行い不飽和ケトンとした。次に酸触媒を用いる立体選択的なMichael反応に付してオキサビシクロ[3.3.0]オクタン骨格へ変換後,アセタール部位を加水分解してラクトールとし,さらに分子内アルドール反応を利用してトランスヒドリンダン骨格へ誘導した。 今後,トランスヒドリンダン骨格から合成したオレフィニックエノンを鍵反応の触媒的環化アルケニル化反応に付してquadrone骨格を構築後,官能基変換により標的分子であるquadroneの全合成を達成する予定である。
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