研究課題
(+)-ビオチン(Btn)は、アビジン(Avn)は非常に安定な複合体を生成する。その解離定数Kdは約1fMであり、通常の抗原一抗体複合体の100万倍も強く、実質上不可逆である。また、pH、塩濃度条件、変成剤の影響を殆ど受けない。そのため、Btn-Avnシステムは生化学、分子生物学、細胞生物学の実験で必要不可欠な技術となっており、その一例として、アフィニティ-カラムクロマトグラフィーを挙げることができる。しかし、Btn-Avn複合体の解離には過酷な条件が必要であり、リガンド-レセプター複合体をそのまま分離、回収するのは非常に困難である。そこで本研究は、申請者らが発見したCaged化合物を利用することにより、光分解性Btn標識試薬の開発を目的とする。中性pH、常温という温和な条件下、光照射によってリガンド-レセプター複合体をintactな状態で回収し、特異的レセプターの同定、構造解析を行うための全く新しいBtn-Avnシステムを提供する。申請者はこれまでに、亜鉛(II)イオン選択的蛍光プローブとして8-hydroxy-quinoline(8-HQ)を側鎖に有する12員環テトラアミンL1を合成した。L1はμM濃度でZn^<2+>と定量的に1対1錯体(Zn(H_<-1>L1))を生成し、蛍光強度が増大する。平成18年度は、L1の8-HQをベンゼンスルホニル基で修飾したCagedプローブ(Caged L1)に、中性水溶液中、紫外光(波長328nm)を照射すると、PhSO2基が脱離してL1が生成することを見出した。また、環状テトラアミン部を持たない4a-bも同様の光分解反応が進行すること、本反応が励起三重項状態でS-O結合がヘテロリティックに解裂して進行することを明らかにした(投稿中)。
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