研究課題
既に報告しているビニルケテンアセタールとアルデヒドのビニロガス向山アルドール反応は、ポリケチド化合物の骨格によく見られる部分構造を一挙に構築でき、これら一連の化合物合成の有力な手法になるものと考えている。抗菌性物質カフレフンジンはこの部分構造を二箇所に含んでおり、本方法論の有用性を示す格好の標的分子といえる。そこで、カフレフンジンの全合成について検討した結果、本方法論を利用して合成した2つのフラグメントを結合する方法によって全合成を達成することができた。さらに本手法を適用し、この部分構造を3個有するTMC-151Cの全合成研究に着手した。さらに、本反応は通常のアルデヒドだけでなく、環状ケトアミドであるイサチンに対しても極めて高立体選択的に付加することを明らかにし、この方法を利用してコンボルタミジン類のエナンチオ選択的な合成を行い、さらに天然物の絶対立体配置の決定を行った。また本反応は、α位にヘテロ原子を有するアルデヒドの場合には、通常のアルデヒドと異なる立体選択性を発現するという興味ある結果を見出した。立体選択性発現機構については、次年度の課題としている。1,2-あるいは1,3-ジオールは生物活性物質でよく見られる部分構造であるが、不斉三級水酸基を有する場合の立体制御は困難とされている。我々は、ヒドロキシプロピオン酸由来のキラルなイミドとアルデヒドのアルドール反応による1,3-ジオールの立体制御法を確立しており、昨年度はナフレジンγの合成について検討した。本合成研究では、不飽和アルデヒドを基質として用いる必要があるが、不飽和アルデヒドの場合は通常のアルデヒドと異なり、収率、選択性が大幅に低下することが明らかとなった。これらの課題は次年度の検討課題となった。
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