研究概要 |
共焦点レーザー顕微鏡の普及によって,微少領域の鮮明な蛍光画像が簡単に得られるようになり,領域特異的な生命現象解析技術は飛躍的に向上した.しかし,この時用いられる抗体等の構造特異的なプローブによる可視化は,タンパク質や核酸に対しては非常に有効であるが,糖鎖を解析する場合には十分に機能しない.そこで,今後発展させるべき新しい技術として,領域特異的な糖鎖の計測が挙げられるが,糖鎖に対する抗体やレクチンを用いた共焦点レーザー顕微鏡観察では糖鎖構造を特定することはできず,最終的には糖鎖の化学的な微量分析が必要となる.レーザーマイクロダイセクションは(LMD)は顕微鏡にレーザー照射装置が接続された機器を使って組織切片を観察しながら,切片上の標的とする細胞塊をレーザーで切り出して回収することのできる新しい研究ツールであり,局所のDNA分析,RNA分析,タンパク質機能解析等に利用されはじめているが,本研究はこれを糖鎖分析に利用する新しい試みである.本年度はLMDを用いて分取した領域特異的な試料のN-結合糖鎖解析法を検討した.まず,LMDと組み合わせて使用できるN-結合糖鎖の超微量分析法の検討を行った.内径1.0mmのセミミクロカラムを用いてピリジルアミノ(PA)化N-結合糖鎖分析の高感度化を検討したところ,広くPA化N-結合糖鎖分析に使用されている内径6.0mmのカラムに比べて20倍以上の感度の向上を達成することが可能となった(S/N=3でPA化N-結合糖鎖の検出限界は400amol).この方法を用いて,ヘマトキシリン染色を施したマウスの脳切片の解析を行った結果,厚さ10μm,半径270μmの切片からN-結合糖鎖を解析することが可能であった.
|