研究概要 |
シアル酸含有糖鎖は組織や細胞ごとに存在量が異なることが報告されているが,微小領域のシアル酸存在量は未だ解明されていない。そこで本研究では,レーザーマイクロダイセクション(LMD)で切り出した組織切片微小領域のシアル酸分析法を確立し,さらに,この方法を用いて脳内シアル酸の分布を解析した。切片への応用に先だって,シアル酸分析法の高感度化をセミミクロHPLCを用いて行ったところNeu5Acの検出限界は約5fmolであり,これは細胞数個中のシアル酸量に相当する。次にこの方法を用いて,6週齢のddY系マウスと胎生20日目のwistar系ラット胎児の脳内シアル酸分布を解析した。6週齢のddY系マウス脳では領域ごとに存在するNeu5Ac量は大きく異なり,視床下部で特に多くのNeu5Acが検出された。ガングリオシドに特異的に働くN-アセチルノイラミニダーゼ3(Neu3)が強く発現している小脳の顆粒細胞層では,他の領域と比較してNeu5Ac量が少ないことが確認された。同じぐNeu3が強く発現している海馬ではNeu5Ac量の平均が脳全体の平均より少なく,また,DG領域ではCA領域より少ないことが判明した。胎生20日目のwistar系ラット胎児では,様々な臓器と比較して大脳皮質のNeu5Ac量が特に多いことが明らかとなった。今後は,タミフルなどのノイラミニダーゼ阻害剤を投与後,マウスの脳を解析する予定である。
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