研究概要 |
他の臓器と比較して脳にはコンドロイチン硫酸が豊富に存在し,神経細胞の伸張など様々な役割を担っていることが示されている.プルキンエ細胞の周囲にはD単位[GlcA/IdoA(2S)-GalNAc(6S)]に富むコンドロイチン硫酸が豊富に存在することから,コンドロイチン硫酸の構造依存的な情報伝達が注目されている.また海馬神経細胞は,D単位を多く含む基質上で培養すると樹状突起様の突起を進展させ,E単位[GlcA/IdoA-GalNAc(4S,6S)]を多く含む場合は長い軸索様の突起を伸張させる.コンドロイチン硫酸中の高硫酸化されたD単位やE単位などの部分構造は,多くのヘパリン結合性成長因子と結合することが知られており,海馬のみならず神経細胞全般の分化・形態形成に大きく関与していると考えられている.本年度分析対象としたコンドロイチン硫酸の高感度な分析法として,2-シアノアセトアミドを蛍光ポストカラム試薬とする高速液体クロマトグラフィー(HPLC)があげられるが,現状の方法では分析感度が不十分であった.そこで蛍光ポストカラムHPLCのセミミクロ化を試みたところ,検出限界を従来法の十分の一以下にすることに成功した.この新しい装置を用いて脳組織切片の微細領域に存在するコンドロイチン硫酸の分析を行ったところ,過硫酸化部分の解析が世界で初めて可能となった.今後の研究では,発生段階ごとのマウス脳組織切片を用いて領域特異的な過硫酸化コンドロイチン硫酸のプロファイルを取り,脳内コンドロイチン硫酸マップの作製を試みたい.
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