本研究は、WRNのDNA複製、修復における役割を明らかにすることにより、ウェルナー症候群患者の染色体の不安定化による発癌と、糖尿病を初めとする老化関連疾患の発症の分子機構の解明を目指すものである。 1. DT40細胞を用いてこれまでに作製した、種々の修復系に関与するタンパク質をコードする遺伝子とWRN遺伝子との遺伝子二重、三重破壊株や、それぞれの遺伝子の単独破壊株を用いてWRNが関与する経路の同定を試み、RAD52とともに機能する可能性があることが示唆された。また、DNAの傷害によっては、WRNとRAD18が同一の経路で機能する可能性を示唆する結果を得ることができた。 2. 1と同様に種々の遺伝子破壊株を作製して解析することにより、カンプトテシンによりDNAに傷害を生じさせた場合には、WRNIP1(我々が発見したWRNに結合するタンパク質)とRAD18が同一の経路で機能することが判明した。また、WRNIP1とRAD18が結合することがわかった。 3・ WRNの機能と酸化ストレスとの関係を解析するために、DT40細胞を用いてスーパーオキシドジスムターゼをコードする遺伝子(SOD1、SOD2)の条件欠損株の作製を行い、その解析を行った。SOD2欠損によりDNAに顕著な傷害は生じることはなかったが、この細胞ではG1期からS期への進行が遅延した。また、SOD1の欠損では、DNAに傷害が生じ細胞が致死になることが判明した。
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