研究概要 |
上記研究課題に関して,当初の計画に従って研究を行ったので報告する。 精子ユビキチンープロテアソームシステム(UPS)は、マボヤ精子の卵外被通過の際に精子通過口を開けるライシンとして機能している事をすでに報告している。当初、卵黄膜成HrVC70をユビキチン化する酵素(E1/E2/E3)をマボヤ精子浸出液から精製することを試みたが、構造解析を行うのに十分な量が得られなかった。そこで、カタユウレイボヤを用いて、精巣で発現しているE2とE3をゲノムデータベースから検索することにした。E3に関しては昨年度の実績報告で報告しているので、今年度はE2に焦点を当てて探索を行った結果を報告する。遺伝子モデルから精巣で高発現している複数のE2候補分子を見出し、それが実際に精巣で発現しているか否かをRT-PCR法により確認した。その結果、ある候補分子が精巣と筋肉で特異的に発現していることが示された。こ酵素が受精に関与するか否かを調べる目的で、発現タンパク質をマウスに免疫し、抗体の作製を試みた。しかし、免疫原性が極めて低く、力価の高い抗体は得られていない。そこで現在、本タンパク質をラットに免疫し、単クローン抗体の作製を試みている。得られれば、それを用いて受精阻害実験等を行う予定である。 ホヤの場合、先体胞が非常に小さく、精子反応時に先体反応を起こしているか否は見解が一致していない。そこで今回、先体反応が明白な数種類のウニ(ムラサキウニ,アカウに,バフンウニ)を用いて、マボヤと同様の酵素系が先体内容物(先体反応後の上清)中に存在するか否かを検討した。その結果,少なくともプロテアソームは先体内容物中に存在することが確認された。また、ウニでは卵黄膜が受精前からユビキチン化されていることが示唆され,哺乳類における報告と類似していた。今後は、ホヤとウニの配偶子ユビキチン化酵素の同定を試みる。
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