研究課題
プロスタグランジン(PG)類の生体作用はアスピリンの標的としてよく認識されているが、その分子メカニズムは依然として不明である。PGの作用は、各PGに特異的な受容体によって介達される。代表者は、PG受容体欠損マウスを作成し、PGの病態・生理作用に関わる責任受容体を同定した。しかし、PG受容体による作用発現の分子機序は依然不明である。PGは何某かの分子標的の作業効率を変化させることで作用発現に至るものと想定されてきたが、このようなPGの下流で働く標的の実体はほとんど明らかでない。本研究の目的は、微細組織発現プロファイル解析法を用いPG標的細胞で受容体欠損により変化する標的分子を検索・検証し、PG作用発現の分子機構を解明することである。以下に今年度の成果を示す。(1)発熱-EP3受容体視索前野EP3発現ニューロンの解析から、PGE2による発熱応答時には視索前野のGABA受容体蛋白質の発現が低下することを見出した。(2)受精-EP2受容体EP2欠損卵丘細胞の解析から、EP2はケモカイン産生を抑制することで受精を促進することを見出した。さらに上皮成長因子の関与を解析中である。(3)消化管保護-EP4受容体デキストラン硫酸誘発性大腸炎での結腸粘膜上皮の解析から、EP4受容体シグナルの有無で変動する遺伝子群を同定した。(4)動脈管閉鎖-EP4受容体胎児動脈管平滑筋に対するEP4受容体の作用を解析し、PGE2-EP4-cAMPシグナルは、ヒアルロン酸分泌の促進と細胞遊走の亢進、さらには内膜形成をうながすことで、動脈管が閉鎖することを示した。
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