研究課題
プロスタグランジン(PG)類の生体作用はアスピリンの標的としてよく認識されているが、その分子メカニズムは依然として不明であった。PGの作用は、各PGに特異的な受容体によって介達されるが、研究代表者はこれまで、PG受容体欠損マウスを作成・解析することで、PGの病態・生理作用に関わる責任受容体を同定してきた。そこで本研究では、微細組織発現プロファイル解析法を用いPG標的細胞で受容体欠損により変化する標的分子を検索し、PG作用発現の分子機構の解明を試みた。以下に18-19年度の成果を示す。(1)発熱-EP3受容体視索前野EP3発現ニューロンの解析から、PGE2による発熱応答時には視索前野のGABA-A受容体蛋白の発現が低下すること、PGE2のこの作用はEP3受容体とGi/o蛋白を介することを見出し、PGE2による発熱作用は、GABAの脱抑制を介する可能性を示唆した。(2)受精-EP2受容体EP2欠損卵丘細胞の解析から、EP2はケモカイン産生を抑制することで受精を促進することを見出した。またケモカインは卵丘マトリクス(ECM)を強化して排卵の際には卵を保護するが、受精時には精子による卵丘ECM分解を阻害することが判った。従って、PGE2はケモカインとともに卵丘ECMを動的に調節することで、受精を助長することが判った。(3)消化管保護-EP4受容体デキストラン硫酸誘発性大腸炎での結腸粘膜上皮の解析から、EP4受容体シグナルの有無で変動する遺伝子群を同定した。(4)動脈管閉鎖-EP4受容体胎児動脈管平滑筋に対するEP4受容体の作用を解析し、PGE2-EP4-cAMPシグナルは、ヒアルロン酸分泌の促進と細胞遊走の亢進、さらには内膜形成をうながすことで、動脈管が閉鎖することを示した。
すべて 2008 2007
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (1件) 産業財産権 (1件)
Biol. Reprod. 78
ページ: 438-444
J. Biol. Chem. 283(印刷中)
J. Biol. Chem. 282
ページ: 32676-32688
ページ: 11613-11617