研究課題
小胞型グルタミン酸トランスポーター(vesicular glutamate transporter, VGLUT)と小胞型GABAトランスポーター(vesicular GABA transporter, VGAT)はそれぞれ、グルタミン酸とGABAによる化学伝達の必須因子である。このtransportersは中枢のシナプス小胞だけでなく、膵臓ランゲルハンス氏島における分泌顆粒に局在しており、それぞれグルタミン酸とGABAの小胞内濃縮を司っている。本研究はVGLUTとVGATの構造と機能を解明することを通じて、ラ氏島におけるこれらのアミノ酸の血糖制御における意義を確定することを目的とした。本年は計画の最終年度である。計画した実験は全て成功裏に終ったことを報告する。以下に要旨を述べる。(1)VGLUT2のトポロジーを解明した。(2)精製VGLUTをリポソームに組み込みin vitroでのVGLUT輸送測定系を確立。これを用いてVGLUTの輸送に必要な必須アミノ酸残基を決定した。さらに、輸送機能は維持しているがターゲッティングに変化がある変異体を複数同定した。(3)VGLUTが所属するSLC17ファミリーの他のメンバーの輸送特性・必須残基を決定した。(4)同様の方法をVGATに応用できた。VGATの輸送に必要な必須アミノ酸残基を一つ決定した。速度論的解析と合わせて輸送機能を論じた。またVGATがβアラニンとグリシンも輸送することを証明した。(5)VGLUTI KO miceを用い、末梢組織におけるグルタミン酸シグナル伝達系の生理的意義を解析した。小腸のL細胞におけるGLT-1内分泌におけるフィードバック制御ならびに骨における骨消化制御を発見した。特に、後者においてグルタミン酸シグナル伝達の欠損により骨粗鬆症が発症することを発見した。(6)VGLUTの非可逆的特異的阻害剤を発見した。(7)ヌクレオチド(特にATP)のシグナル伝達に関わるトランスポーターを世界に先駆け発見し、その性質を解明した。
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