研究概要 |
リンパ球は、(1)リンパ球表面の接着分子L-セレクチンと高内皮細静脈(HEV)上のリガンドの相互作用によるローリング、(2)HEV上のヘパラン硫酸に提示されたケモカインによるリンパ球上の接着分子インテグリンの活性化、(3)活性化インテグリンによるリンパ球とHEVの強固な接着、(4)血管外遊走という一連の過程を経てリンパ節に移行し、免疫応答を開始する。我々はこれまでに、硫酸基転移酵素遺伝子欠損マウスを用いて、ステップ(1)におけるL-セレクチンを介したリンパ球のローリングにはユニークな構造を持っ硫酸化糖鎖PNAd(peripheral lymph node addressin)が必須の役割を果たすことを示して来た(Nature Immunology,6:1096-1104,2005)。一方、ステップ(2)においてはヘパラン硫酸がHEV上におけるケモカインの提示に関与すると考えられているが、in vivoにおける十分な証明はない。本研究においては、新たに樹立するHEV特異的Creリコンビナーゼ発現マウスを用いてHEV特異的に硫酸化糖鎖発現の改変を行い、in vivoにおけるケモカイン提示分子の実体を解明することを目的とする。本年度は、HEV特異的遺伝子GlcNAc6ST-2の遺伝子座にEGFP遺伝子を挿入してノックインマウスを樹立した際に作製したターゲッティングベクター(J.Biol.Chem.,279:3058-3067,2004;Nature Immunology,6:1096-1104,2005)のEGFP遺伝子とGlcNAc6ST-2遺伝子の一部をCreリコンビナーゼ遺伝子に置き換えたCreリコンビナーゼ遺伝子ノックイン用の新規ターゲッティングベクターを作製した。次年度は、このターゲティングベクターを用いて、HEV特異的にCreリコンビナーゼ遺伝子を発現するGlcNAc6ST-2-Creノックインマウス(F1ヘテロ接合体マウス)の作製を試みる予定である。
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