研究概要 |
リンパ球は、高内皮細静脈(HEV)との多段階からなる一連の相互作用を介してリンパ節実質に移行し、免疫応答を開始する。我々はこれまでに、硫酸基転移酵素遺伝子欠損マウスを用いて、第一ステップにおけるL-セレクチンを介したリンパ球のローリングにはユニークな構造を持つ硫酸化糖鎖PNAd(peripherallymph node addressin)が必須の役割を果たすことを示して来た(Nature Immunology, 6:1096-1104,2005)。一方、第二ステップでは硫酸化糖鎖の一種であるヘパラン硫酸がHEV上におけるケモカインの提示に関与すると考えられているが、in vivoにおける十分な証明はない。本研究では、新たに樹立するHEV特異的Creリコンビナーゼ発現マウスを用いてHEV特異的に硫酸化糖鎖発現の改変を行い、HEVにおけるケモカイン提示分子の実体を解明することを目的とする。本年度は、硫酸基転移酵素GlcNAc6ST-2がHEV特異的に発現することに着目して、同遺伝子のプロモーター/エンハンサーの支配下にCreリコンビナーゼを発現する新規トランスジェニックマウス(GlcNAc6ST-2-Cre Tg)の作製をおこなった。ROSA26レポーターマウスと掛け合わせて組織学的検討をおこなったところ、GlcNAc6ST-2-Cre Tgにおいては末梢リンパ節HEVに強くCreリコンビナーゼを発現することが確認された。今後、このマウスを用いてHEV特異的に硫酸化糖鎖合成酵素の遺伝子改変を進め、HEV上におけるケモカイン提示分子の解明を進める予定である。また本年度は、蛍光試薬を用いて硫酸化糖鎖を簡便かつ高感度に分析する方法の開発を試みた。はじめに糖タンパク質よりアンモニア/ホウ酸により還元末端がインタクトな糖鎖を切り出し、2-アミノベンズアミド(2-AB)による蛍光標識を行い、順相系および逆相系HPLCの双方を用いた二次元HPLCにより分離・分析を行った。この糖鎖分析法は、今後ケモカイン提示分子の糖鎖分析に応用する予定である。
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