研究概要 |
創薬に有用と考えられる非硫酸化コンドロイチンをヒドラに発見した。すなわち、ヒドラで始めてコンドロイチンとしてグリコサミノグリカンの存在を示し、以前に発見した線虫の場合のように、ヒアルロン酸は存在しないことを発見した。また、線虫のコンドロイチンが細胞質分裂に必須の成分であることを以前に報告したが(Mizuguchi et al., Nature, 423,443-448,2003)、今回その分解酵素を線虫に発見した(特許出願中)。神経系をもつヒドラでの発見から、また何か新規の生命現象へのコンドロイチンの関わりが発見できる可能性がある。ツバメの巣にも大量のコンドロイチンの存在を証明し、医療応用の可能性を指摘した。 一方、ブタの脳に存在を証明していたコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸のハイブリッド型糖鎖の神経突起慎重促進活性に関与する分子として肝細胞増殖因子(HGF)を同定し、機能発現の分子メカニズムに肝細胞増殖因子とプレイオトロフィンのシグナル伝達経路が関与することを証明した。また、同様の活性を同様のメカニズムで発現するコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸のハイブリッド型糖鎖をサメの肝臓およびカブトガニの軟骨にも発見した。これらの活性にとって、糖鎖中のイズロン酸が重要であることを証明し、NMRを利用したイズロン酸の新しい解析法を開発した。 一方、糖鎖機能の解析に有用ないくつかの硫酸化グリコサミノグリカン特異抗体の糖鎖エピトープの一次構造を決定するだけでなく、計算化学の手法を新規に導入してエピトープの高次構造を解明し、硫酸化オリゴ糖鎖の新しい高次構造解析法を開拓しつつある。これらの一連の研究の一部は最近の総説に詳述した(Sugahara, K. and Mikami, T., Curr Opin. Struc. Biol., 17,536-545,2007)。
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