オキシトシナーゼサブファミリーに属するヒト脂肪細胞由来ロイシンアミノペプチダーゼ(A-LAP/ERAP-1)の基質認識に関与する残基を探索し、Gln-181を同定した。本残基をAspに変換したところ、人工基質に対する基質特異性が中性アミノ酸から塩基性アミノ酸へと劇的に変化した。また天然ペプチド基質に対してもその基質特異性が大きく変化することを見出した。これらの変化は対応する残基がAspである白血球由来アルギニンアミノペプチダーゼ(L-RAP/ERAP-2)の(人工基質、天然基質双方への)基質特異性とよく一致することから、両酵素の進化上の親近性がさらに確認されるとともに、両酵素の進化過程における分岐が小胞体での抗原ペプチドの生成の多様性を生み出していったものと考えられた。本研究によりオキシトシナーゼサブファミリー酵素が基質となるペプチドのN-末端アミノ酸残基を認識するメカニズムの一端が明らかになるとともに、進化過程において両酵素が分岐したことによりプロセシング可能な抗原ペプチドのレパートリーが著しく増加したことで、生体防御能が高まっていったことを示唆できたと考えている。 また本サブファミリー酵素群の類縁酵素であるリーベリンが変異したアミノ末端アミノ認識モチーフを有していることを利用して、本モチーフ(GXMEN)の酵素反応への寄与について検討した。その結果本モチーフが基質ペプチドの長さおよび隣接する残基の認識に関わることで、その基質特異性の決定に関与することが明らかとなった。 以上、本研究の成果はオキシトシナーゼサブファミリーを含むM1アミノペプチダーゼの基質認識機構の解明に資する新たな知見を提供するものであり、これら酵素を標的とした創薬研究に有用であると考える。
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