エキソソームは細胞から分泌される多層膜の小胞で、その成分は細胞の生育状態、生育環境、そして細胞が貪食する物質により変化すると考えられる。本研究では細胞内寄生細菌が感染している細胞から分泌されるエキソソームの成分を調べ、エキソソームの細菌感染における機能、特に生体防御における機能解析を行うことを一つの大きな研究目的としている。今年度はエキソソーム成分の分析に必要な解析技術に関する研究および細菌の細胞内寄生の実験系に関する研究を行った。 細胞内寄生細菌であるサルモネラ菌はマクロファージなどの貪食細胞や非貪食細胞で細胞内増殖を行う。この際に外膜に由来するリポ多糖やペリプラズムに存在するペプチドグリカンなどの免疫系を賦活する働きのある物質が細胞内で部分的に消化されて、そのあとでエキソソームに輸送される可能性を考えている。そこで、これら消化断片の構造解析を行ラことを目指して、まずペプチドグリカンの基本単位を質量分析計で検出する測定系の確立を行った。天然ペプチドグリカンの構造解析系の確立は次年度以降の課題である。また、サルモネラ菌の細胞内寄生・増殖系の確立に関してはマウスマクロファージ由来のRAW細胞と非貪食細胞であるヒトHEK293細胞で確立できた。さらに、前年度に確立した質量分析計によるアミノアラビノース修飾型のリピドA検出系を利用してリピドAの構造解析を行うことにより研究論文の発表を行うことができた。
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