本研究では、新興薬剤耐性基盤メタロ-β-ラクタマーゼを標的とし、その基質加水分解機構の解明と三次元立体構造に立脚した阻害剤の開発を目的とした。 この目的のために本年度は、日本で発見されたメタロ-β-ラクタマーゼ(IMP-1)の活性中心に存在する二つのZn(II)イオン(Zn1、Zn2)の溶液中での配位構造とZn1、Zn2の役割について調べるために、まずWTIMP-1からZn^<2+>を取り除いたアポ酵素(apo IMP-1)の調製を行った検討を行なった。 これまで野生型IMP-1からZn^<2+>を取り除いたアポ酵素(apo IMP-1)の調製は行われていた。しかしながら、再びZn(II)イオンをapo IMP-1へ添加した際に活性が100%回復するapo IMP-1酵素の調製には成功していなかった。そこでapo IMP-1酵素の調製法を詳細に検討したところIMP-1溶液に直接EDTAを添加し、変性防止剤として30%のグリセリンを加え、ゲルろ過で過剰のEDTAを取り除くことで、100%活性回復するapo IMP-1調製法を確立することができた。 次に、Zn(II)イオンのキレート試薬であるEDTA共存下における野生型IMP-1の二つのZn(II)イオンの解離速度並びに解離過程を速度論的に解析した。この結果、IMP-1からのZn(II)イオンの解離は二つの逐次的な一次反応で進行することがわかった(即ち、Di Zn(II) IMP-1から一個Zn(II)が解離してmono Zn(II)-IMP-1を生成し、そのmono Zn(II)-IMP-1からZn(II)イオンが解離しapo IMP-1を生成すると結論づけた。)
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