本年度は、以下の2つのサブプロジェクトを押し進めた。 (1)アミン-アルデヒド/イミンの化学平衡を利用して、Scaffoldとなるトリアルデヒド分子と数種のアミンおよび標的分子のN-アセチル-Ileあるいは!>一アセチル-Ile-Ala(アミロイドβ42のC末部分構造)を共存させ、平衡反応を起こさせた。本反応を収束させ、イミン部分を還元することにより構造を固定した。標的分子共存下によって経時的に増加する分子A、及び減少する分子Bをそれぞれ単離し構造を明らかにした。増加した化合物AとN-アセチル-Ileとの結合定数を求めると0.9×10^3M^<-1>と一定の結合力を有しており、一方、減少した化合物Bでは結合定数は1.5×10^2M^<-1>と低い値であった。このことより、提案した「化学進化的な合成化学」の概念に沿った結果が得られたと考えられる。 (2)マンガンサレン錯体のエチレンジアミン部位にシクロペンタン環を縮合させ、シクロペンタン環のマンガン原子側に種々の官能基を導入した化合物群を合成した。次にそれらを触媒として過酸化水素を酸素と水に分解するカタラーゼ様反応を行った。その結果、過酸化水素と親和性が高いことが知られている尿素基に高い反応促進効果が認められた。一方、0-0結合活性化を行うことも予想されたカルボキシ基では、逆に官能基のないものより活性は大きく低下した。基質である過酸化水素を分子認識し得る尿素基の高い効果は、酵素と同様に基質認識能による反応効率化によると推測された。
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