研究概要 |
1.ペプチド性HA阻害剤の活性評価 (1)生化学的検討 2年目の成果により決定した2種のHA結合モチーフを、1年目で決定したHAに結合するための多価型ペプチドライブラリーの最適核構造と全く同じ核構造に組み込み、4価のペプチド性HA阻害剤を化学合成した。これら2種の新規HA阻害剤(RVとKRと呼ぶ)のHA結合活性について、ビアコアを用いた結合速度解析を行い、結合定数を算出した。その結果、RV,KRともにsubmicroMオーダーの非常に強い結合活性を示すこと、さらにRVについては、シアル酸結合サイトに変異を有するHAミュータント(L194A)に対しては結合定数が数倍に増加したことから、シアル酸結合サイトに特異的に結合していると考えられる。HAによるRBCの凝集活性に対するRV,KRの阻害効果を検討したところ、RV,KRは単独でRBCに結合する活性を有していたため、活性評価には至っていない。そこで、実際のウイルス増殖に対する効果を検討することとした。 (2)インフルエンザウイルスに対する阻害活性の検討 MDCK細胞を用いて、実際の臨床分離H1N1インフルエンザウイルスの増殖活性を測定する系の確立を試みた。これまでにMDCKでの増殖培養における、ウイルスのタイター、寒天培地中のトリプシン濃度、等の最適化を行い、再現性よくインフルエンザウイルスの増殖活性を測定する系を確立することができた。現在本系を用いて得られたペプチド性HA阻害剤RV,KRの活性評価を行っている。
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