研究概要 |
本研究では、マイクロRNAが薬物誘導性肝障害発症に及ぼす役割について検討した。miRNAマイクロアレイを用い、チオアセタミド処置後早期において変動するmiRNAについて探索した。毒性に関与するmiRNAとして、miR-21が見出され、その変動は複数の肝毒性化合物において認められた。見出されたmiR-21について、in vitro実験系を用いてmiR-21抑制状態が及ぼす薬物誘導性細胞障害を検討した。検討に用いたシンバスタチン、ロバスタチンにおいて細胞障害性がmiR-21のAsO導入によって増強され、miR-21の働きは細胞の保護作用であることを薬物誘導性細胞障害の面から明らかにした。以上、miRNAという新しい分野において、薬物誘導性肝障害に及ぼす影響をいち早く検討した報告としてmiRNAの毒性学的な機能解析に情報を提供するものである。また、プレグナンX受容体(Pregnane X receptor, PXR)は、チトクロームP450(CYP)3A4をはじめとする薬物代謝酵素の誘導的な発現の制御に関わる核内因子である。この研究で、細胞レベルでの検討において、PXRタンパク質はmiR-148aを過剰発現させると発現が減少し、miR-148aをアンチセンスオリゴヌクレオチドで阻害すると発現が増加した。また、PXRの翻訳効率の指標であるPXRタンパク質/PXR mRNA比は、miR-148aの発現量と逆の相関にあることを25名のヒト肝試料について明らかにした。また、ヒト肝におけるPXRタンパク質の発現量は、CYP3A4のmRNAおよびタンパク質の発現量を相関した。本研究で、我々はmiR-148aがヒトPXRの発現を転写後調節しており、これによりヒト肝におけるCYP3A4の常在的および誘導的発現が制御されていることを見出した。
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