本研究では、まず大腸に存在する腸内細菌で特異的に崩壊するキトサンカプセル内にプレドニゾロンを封入し、本カプセル経口投与後のプレドニゾロンの大腸特異的送達ならびに全身循環への移行性について検討した。その結果、キトサンカプセル内にプレドニゾロンを封入し、本カプセル経口投与後のプレドニゾロンは、主に小腸下部や大腸に存在し、小腸上部にはほとんど存在しないことが認められた。一方、対照群としてゼラチンカプセル内にプレドニゾロンを封入し、本カプセル経口投与後のプレドニゾロンは、小腸上部にほとんど局在し、小腸下部や大腸には移行しないことが確認された。また、キトサンカプセル内にプレドニゾロンを封入し、本カプセル経口投与後のプレドニゾロンの血漿中濃度は、ゼラチンカプセルにより投与した場合に比べ顕著に低下することが認められた。したがって、キトサンカプセルを用いることによりプレドニゾロンを大腸に特異的に送達でき、また全身への移行性を抑制できることが明らかとなった。さらに、キトサンカプセル内にプレドニゾロンを封入し、本カプセルを経口投与した場合、trinitrobenzene sulfonic acid(TNBS)注腸による大腸炎に対し、ゼラチンカプセル群に比べ優れた治療効果を有することが認められた。また、プレドニゾロンを封入したキトサンカプセルを経口投与した場合、ゼラチンカプセルの場合に比べ胸腺の萎縮があまり観察されず、キトサンカプセルはプレドニゾロンの全身的な副作用の軽減にも有効であることが確認された。これらの知見は、炎症性腸疾患治療薬であるプレドニゾロンの有効かつ安全性の高い投与形態の開発に有用な基礎的情報を提供するものと思われる。
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