研究概要 |
脂肪酸結合タンパク分子ファミリー(FABPs)は、水に不溶な脂肪酸と結合し、細胞内での動きと機能を制御する。これまでに知られていないFABPの新しい機能を検証すべく、3種の遺伝子ノックアウトマウスに対する表現型解析と形態学的組織発現解析を軸に本年度研究を施行して得た成果は、以下の通りである。 1 脳型FABP(B-FABP)ノックアウトマウスのアストロサイトでは、n-3系脂肪酸の取り込みが低下し、細胞の分裂能低下が招来されていること(投稿準備中)。また行動学的解析から、B-FABPノックアウトマウスが恐怖・不安の亢進を示すこと(Owada et al.,Eur J Neurosci,2006)。 2 表皮型FABP(E-FABP)ノックアウトマウスの表皮細胞では、早期分化の異常が認められ、必須脂肪酸の取り込みの低下琶ともに表皮分化制御に関わるエイコサノイドの産生に変化が招来されていること(投稿準備中)。 3 E-FABPノックアウトマウスの樹状細胞や肥満細胞では、内毒素の刺激によって産生されるIL-12やTNF-αの産生が、それぞれ亢進あるいは低下し、シグナル分子であるMAPキナーゼやNFkBの活性変化が認められること(Kitanaka et al.,BBRC,2006)。さらにE-FABPノックアウトマウスが急性炎症に対して脆弱であること(投稿中)。 4 脂肪細胞型FABP (A-FABP)が、リンパ球の細胞死過程で核内での発現増強を示し、細胞死の制御に深く関わる可能性があること(Abdelwahab et al.,Mol Cell Biochem,印刷中)。 以上の結果は、FABP分子群がエネルギー産生や膜脂質の合成などの旧来提示されていた機能にとどまらない、多彩な細胞機能に広く関与することを示唆する。
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