細胞分裂時における染色体の形成(凝縮)、分配(染色分体形成)、消失(脱凝縮)のメカニズムを解明するために、染色体の挙動と構造変化を解析した。特に平成18年度は、以下の2つのテーマで研究を行った。 1 細胞分裂における染色体の挙動の動的イメージング 培養細胞(Hela細胞とヒトリンパ球)の細胞分裂像を、位相差顕微鏡によりタイムラプス撮影し、細胞分裂における染色体の基本動態を解析した。各細胞の細胞周期と分裂期の時間を明らかにした。さらに、分裂期の各期において染色体標本を採取し、染色体蛋白質であるトポイソメラーゼIIαの局在を免疫組織化学的に解析し、この蛋白質が染色体の軸に集積すること、染色体のバンド構造と同様なパターンを示すことを明らかにした。 2 DNA合成期のタイミングと染色体の高次構造変化の関連の解析 培養細胞をダブルチミジン法により細胞周期を同調させた後に、DNA合成期の前半と後半にBromdeoxyuridine(BrdU)を短期投与する実験系を確立した。この方法でDNA合成期にBrdUを取り込ませた細胞を細胞分裂の中期で固定し、その染色体に対してBrdの蛍光免疫染色を行うと、染色体にバンド状のパターンが観察できた。このパターンを詳しく解析するために正常リンパ球の1番ないし2番染色体について蛍光観察と原子間力顕微鏡観察を行った。その結果、DNA合成期の前半ないし後半に取り込ませたBrdUの染色体上の位置は、各染色体で一定していることが示された。また、その局在と染色体の高次構造との関係が示唆された。
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