研究課題
従来の研究で、腎遠位尿細管でのNa^+再吸収過程に不可欠の役割を果たすK^+-recyclingのイオン通過孔を形成するK^+チャネルと、その機能局在を規定する特異的アミノ酸配列(局在シグナルモチーフ)を同定し、昨年度までの研究で、基底膜側K^+-recycling経路を担うK^+チャネル局在シグナルの一つであるPDZ-bindingモチーフを認識する蛋白としてMAGI-1を同定し、MAGI-1上のPPZ-bindingモチーフ認識部位を解明することに成功していた。この研究成果に基づき、PDZ-bindingモチーフを介したK^+チャネル-MAGI-1の相互作用の制御機構の解明を進めた。この結果、個体へのイオン負荷状況により相互作用が変化すること、この相互作用がPDZ-bindingモチーフへのリン酸化を介して制御されていることを明らかにした。更に、リン酸化を担うキナーゼの解明を進め、循環血漿量の調節に関与することが明らかになっているキナーゼがPDZ-bindingモチーフのリン酸化を担っている可能性を明らかにすることに成功している。この結果は、腎遠位尿細管でのNa^+再吸収過程が循環血漿量の調節において重要な働きを持つことを示唆する近年の生理学的研究に合致するものであり、循環血漿量が血管抵抗と並ぶ血圧を規定する主要因子であることを考慮すると、本研究成果を高血圧症治療へ応用出来る可能性を示唆すると考えられる。また、高血圧症や電解質異常に対する臨床面からもアプローチを試み、腎血管性高血圧症と内分泌性高血圧症の新たな診断法を明らかにし、また電解質異常に対する解釈も新たな呈示しており、基礎・臨床両方向からのイオン輸送に関する研究を進展することが出来た。
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