研究概要 |
高血圧症は本邦で10人に3人以上といわれる高い罹患率を示す先進諸国における最大の心血管イベント(中枢神経系・心臓における血管障害)危険因子である。適切な血圧制御による心血管イベントの発症抑制効果が判明しているが(N. Engl. J. Med. 2000, 342 : 1-8)、現行の治療法では高血圧症の半数以上で適切な降圧が達成できていない(治療抵抗性高血圧症)。 血圧は末梢血管抵抗と循環血漿量により規定されるが、現行降圧剤は主に末梢血管抵抗を標的としており、治療抵抗性高血圧症の一因であることが推定される(Cell 2001,104 : 545-556)。 循環血漿量は腎遠位尿細管におけるNa+再吸収過程により制御されている。同部でのNa^+再吸収は、基底膜側Na^+/K^+-ATPaseを駆動力とし管腔側Na^+輸送体を介し行われる。このため、再吸収に際して細胞内に流入するK+を細胞外に出すK^+-recycling機構がこれを維持していると考えられる。 本研究では、K^+-recycling機構を構成するチャネルを主な標的とし、腎遠位尿細管Na^+再吸収を司るイオン輸送体の機能発現を規定する分子機構を解明することにより、同機構の制御法を解明し、これに則り循環血漿量を適切に制御することにより、病態生理に基づいた高血圧症の新たな治療法の解明を試みる。
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