研究課題/領域番号 |
18390070
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
佐久間 康夫 日本医科大学, 大学院医学研究科, 教授 (70094307)
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研究分担者 |
加藤 昌克 日本医科大学, 医学部, 助教授 (90143239)
木山 裕子 日本医科大学, 医学部, 講師 (60234390)
折笠 千登世 日本医科大学, 医学部, 助手 (20270671)
濱田 知宏 日本医科大学, 医学部, 助手 (90312058)
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キーワード | 脳の性差 / 芳香化 / エストロゲン受容体 / SDN-POA / AVPV / GnRH / GABA / NKCC1 |
研究概要 |
哺乳類の脳にはニューロンの数、細胞体体積、シナプス数などに顕著な性差の存在する部位がある。この性差は性分化の臨界期と呼ばれる個体発生の特定の時期に内分泌環境をはじめとする環境条件によって成立する。ラットでは臨界期が周産期にあり、精巣の分泌するテストステロンが脳内で芳香化され、エストラジオールとなってエストロゲン受容体(ER)、特にERαに作用することで、脳内神経回路の雄型化を起こす。しかし、ERαの活性化以後、どのような遺伝子カスケードの動作により、ニューロンの新生、移動あるいはアポトーシスによる選択的死滅に変化が起こり、性差が生じるかは不明である。脳の性差の典型例に、雄で発達し多数のニューロンを含む内側視索前野の性的二型核(SDN-POA)と、我々が2002年に発見した雌で多数の細胞を擁する前腹側室周囲核(AVPV)がある。これらの部位の存在は脳の性分化の機序が部位特異的であることを示す。本年度は性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)のプロモータにより、蛍光タンパクEGFPを発現させたトランスジェニックラットから採取した初代培養GnRH細胞を用いて、脳の性分化に影響をおよぼすことが知られているGABAの効果を検討した。GnRHニューロンは成熟後も1型Na^+-K^+-2Cl^-共輸送分子(NKCC1)がさかんに活動する一方で、細胞内Cl^-を駆出するClC2やKCC2の発現量が低いため細胞内Cl^-濃度が高いという特徴を持つ。このため、細胞周囲のGABAにより興奮が起こり、電位依存性のCa^<2+>チャネルが活性化してCa^<2+>の流入とGnRHの分泌が起こる。GABAはシナプス外に分布するGabazine感受性のGABA_A受容体サブタイプを介して持続的作用を発揮した。この機序が視床下部など性的二型を示す脳部位におけるニューロンの運命を決めると考えた。細胞内Ca^<2+>の増加はアポトーシスを促進するばかりでなく、細胞の移動の調節にも関与する。また、キナーゼ系の活性化により、CREBの燐酸化など細胞の生存を促す経路を活性化する可能性も考えられるので、次年度にはこれらの可能性について具体的検討を行う。
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