研究概要 |
脳による生殖内分泌調節の最終共通路は性腺刺撒ホルモン放出ホルモン(GnRH)ニューロンである。蛍光タンパク遣伝子の導入により、ラットGnRHニューロンを可視化した。γ-アミノ酪酸(GABA)はGABA_A受容体に作用して、単離した初代培養GnRHニューロンに脱分極を起す。GABA_A受容体は5量体で通常2つのα,2つのβ,1つのγサブユニットから構成されてアニオンチャネルを形成するが、GnRHニューロンではα2,β3,およびγ1またはγ2サブユニットの発現がRT-PCRで確認された。γ2を発現するGnRHニューロンではニューロステロイドによるGABAA電流の増強が観察された。GnRHニューロンに生じるGABA_A電流はメラトニンにより修飾された。メラトニンは雄では67%のニューロンでGABA_A電流を増強、19%で抑制したのに対し、雌では増強が27%、抑制が57%と明らかな性差を認めた。メラトニン受容体遮断薬luzindoleにより、メラトニンによる修飾は失われた。性的未成熟幼若ラットではメラトニン作用は見られなかった。メラトニン受容体の強制発現実験ではMT1受容体の活性化がGABA_A電流を増強し、T2受容体は抑制するといわれる。GnRHニューロンではMT1受容体のみ検出できた。受容体を発現する細胞数は雄由来のものが雌より多かった。メラトニン受容体の活性化はcAMPの合成を抑制し、PKAによるGABA_A受容体βサブユニットのリン醗化を妨げるか、あるいはGABA_A受容体とMT1受容体の分子間相互作用により、GABA_A電流が修飾されると現時点では考えている。
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