研究概要 |
リンパ球に発現するムスカリン性受容体(mAChR)の機能解析:M_3mAChRノックアウトマウス(KO)を用いて、リンパ球機i能に及ぼすアセチルコリン(ACh)の役割を検討した。Wild-typeでは,コンカナバリンA(ConA)によりACh合成酵素コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)、インターロイキン-2(IL-2)およびc-fos遺伝子発現が増強した。M_3mAChR-KOマウスでは,ConAによるIL-2およびc-fos遺伝子発現が減弱した。以上より、AChによるリンパ球機能調節へのM_3mAChRの関与が示唆された。 膀胱頚部括約筋機能におけるmAChRサブタイプの役割:排尿時における膀胱括約筋の弛緩機構におけるmAChRの関与を検討した。Wild-type標本においてノルアドレナリンによる収縮張力をカルバコール(CCh)は濃度依存性に弛緩させた。この弛緩反応はアトロピンにより抑制された。CChによる弛緩反応は、Wild-type標本と比較してM2-KO標本では同程度であったが、M_3-KO標本において減少した。CChによる弛緩反応はインドメタシンにより著しく抑制された。PGE_2は濃度依存性の弛緩を生じた。以上より、弛緩にはM3血ChR関与しており,弛緩へのPGE2の関与が示唆された。 過活動膀胱治療薬の膀胱血ChR結合特性の解析:mAChR-KOマウスを用いて、膀胱及び唾液腺におけるmAChRに対する排尿障害治療薬の受容体結合動態を検討した。M_2-KOマウスにおける受容体結合実験において、オキシブチニン(Oxy)及びソリフェナシン(Sol)は、膀胱と唾液腺のM_3mAChRに対し同等の結合親和性を示した。Oxyは、M_2-KOマウスへの経口投与により、膀胱より唾液腺のM_3血ChRに高い結合親和性を示した。M_2-KOマウスへのSolの経口投与は、Oxyとは逆に、唾液腺より膀胱のM_3mAChRに高い結合親和性を示した。以上より、SolはOxyより副作用(口内乾燥)の少ない薬物であることが実証された。
|